美智男

蒸し暑さの和らいだ、夏の夜。

どうしようもなく切ない気持ちになるのは何故だろうと自分に問いかけるが、心の奥底では美智男にはわかっていた。

それは単なる頭脳での記憶ではない、体が感覚として覚えている記憶。具体的に思い出すことはできない少年時代を、湿った風が運んでくるのだ。

そのどうしようもない切なさに、今の自分があのときに、楽しかったあの少年時代にはもう二度と戻ることはできないのだということを嫌でも実感させる。ひょっとすると、自分はどこかで、人生の選択のどこかで大きな間違いをしまっているのではないか?という錯覚に陥ることもあった。

今の自分には愛する人がいる。守るべきものがある。それらは決して重荷などではなく、自分にとってかけがえのないものだ。

そんな思いを一人馳せながら、フッと微笑むと美智男はバキュームカーのハンドルを切った。

そのバキュームカーに積まれているのは、100億トンのうんこである。